第9話『望む未来を掴むために~私が世界を創る~』
朝、いつものように目覚ましの音で目を覚ました。
だけど、どこか違う。重たいはずのまぶたの奥に、ほんのりと光が射しているような、そんな感覚だった。
「今日も始まるんだなぁ…」
私は小さくつぶやいて、起き上がった。
台所でお湯を沸かしながら、昨日のことを思い出す。
タロットで引いた「力」のカード。
あれはまるで、「今こそ、あなたの内側の力を信じなさい」と言ってくれているようだった。
コーヒーを飲みながら、私はノートを開いた。
そこには、これまで何度も書き留めてきた願いや未来のイメージが並んでいる。
『美月と穏やかに暮らす日々』
『心から信頼できる仕事仲間』
『私を必要としてくれるクライアント』
『自由な時間』
『安心できる自分』
文字にすると、とてもシンプルな夢。
でも、それが私にとっては何より大切な未来だった。
「私がこの未来を選ぶんだ。誰のせいでもない。私が自分の脚で歩いていくんだ。」
そう思ったら、ふっと肩の力が抜けた。
その日、出勤途中の電車の中で、またひとつの偶然に出会った。
向かいの座席に座っていた女性が読んでいた本のタイトルが、なんと『意図的に選ぶ人生』
一瞬ドキッとして、思わずそのタイトルをメモした。
「最近、こういう偶然ばっかりだなぁ…」
でも、もう“偶然”なんて言葉で片付けなくてもいいのかもしれない。
全部、自分が選び取っている世界のサインなんだ。
職場では、昨日のモヤモヤが少しだけ晴れた。
美香ちゃんが、こっそりメモを渡してくれた。
『元気出して。みんなちゃんと見てるよ』
その一言に、涙が出そうになった。
今の私は、こんな小さな優しさにもすぐに反応してしまう。
だけど、それでいいのだと思った。
心が柔らかいまま、世界とつながっていけたら、それが一番幸せなことだ。
帰り道、ふと立ち寄った書店で、目についた自己啓発のコーナー。
何気なく手に取った一冊をめくると、こんな一文が目に入った。
『世界はあなたの鏡。変えたいなら、まずはあなた自身が微笑みなさい。』
私は、レジにその本を持って行きながら、鏡の前に立った自分を想像した。
「うん、私、笑ってるかな?」
その晩、久しぶりにタロットカードをシャッフルしてから、いつものように質問を投げかけた。
「私はこのまま進んでいいですか?」
出たカードは「魔術師」
「おぉ…来た、創造のカード…」
魔術師は、手にするすべての道具を使って現実を創る存在。
まさに今の私に必要なメッセージだった。
「よし、やってみよう。」
私は机の引き出しから、1冊の新しいノートを取り出した。
その最初のページに、こう書いた。
『これは、私が創る世界の設計図』
そこに私は、これからの日々の理想、やりたいこと、会いたい人、感じたい気持ち、全部ぜんぶ書き込んでいった。
書きながら、心がどんどん明るくなっていった。
気がつけば、夜の空に星がひとつ、またひとつと瞬き始めていた。
「この世界は、私が選んでいい」
私はそう確信した。
未来はまだ白紙。
でも、その白紙にどんな色を塗るのかは、私の手にかかっている。
そしてその夜も、夢の中で美月が出てきた。
「お母さん、絵、上手だね」
夢の中の私は、ノートに大きな虹を描いていた。
虹の向こうに、美月と私が手をつないで笑っていた。
私はその絵を、現実にも描いていこう。
少しずつ、少しずつ。
だって私は、私の世界を創る人なのだから。