第7話『現実が変わり始める瞬間~小さな奇跡の連鎖~』
ある朝、目が覚めたとき、カーテンの隙間から差し込む光がいつもより柔らかく感じた。
なんだか今日は良いことがありそうな気がする——
そんな予感だけで心が少し軽くなった。
コーヒーを淹れながらふとスマホを見ると、占い用アカウントに新しいメッセージが届いていた。
「彩香さん、先日の占いで勇気をもらいました。
おかげで一歩踏み出せました。本当にありがとうございます。」
その言葉を見た瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。
私が誰かの役に立てている——
それが、私自身の力にもなっていることに気づいた。
洗濯物を干していると、玄関チャイムが鳴った。
郵便配達の人がにこやかに手紙を渡してくれる。
差出人は、なんと児童相談所だった。慌てて封を開けると、そこには「次回の面談で、娘さんとの短時間の面会が可能です」という文字が!
「え…本当に?」
嬉しさで全身が震えた。奇跡って、こんな風に突然やってくるんだろうか。
急にソワソワし始めて、何をしていいのかわからなくなった私は、とりあえず部屋を掃除し始めた。
窓を開けて風を通し、観葉植物に水をやり、クローゼットの中まで整理した。
部屋が綺麗になると、心も不思議とすっきりした。
掃除をしている最中、古いアルバムが出てきた。
ページをめくると、幼い美月が笑顔でケーキを頬張っている写真や、一緒に花火を見上げた夏の夜の思い出が次々と現れた。
「こんなにたくさんの幸せを、私は持っていたんだ…」と胸がじんわり熱くなった。
午後、公園に散歩に出かけると、桜の花がちらほら咲き始めていた。
ベンチに座ってぼんやりしていると、知らない子供が私のところに走ってきて、にっこり笑って「はい!」と四葉のクローバーを差し出してくれた。
「わあ…ありがとう。」
なんだか涙が出そうになった。
小さな手のひらから渡されたその四葉は、まるで「もう大丈夫だよ」と言ってくれているようだった。
家に帰る途中、ふと立ち寄ったスーパーで、レジに並んでいたら前にいたご婦人が振り返り、「あなた、良い顔してるわね」と声をかけてくれた。
思わず笑顔で「ありがとうございます」と答えると、その瞬間、心の中がパッと明るくなった。
さらに帰宅すると、ポストにもう一通手紙が届いていた。
今度は、以前占った若い女性からの感謝の手紙だった。
そこには「自分を信じることを教えてくれてありがとう」と綴られていた。
帰宅後、タロットカードを一枚引いてみた。出たのは「太陽」のカード。
「やっぱり…流れが来てる。」
カードを両手で包み込むように持ちながら、私は深呼吸をした。
幸せって、大きな出来事だけじゃなくて、こういう小さな奇跡の積み重ねなのかもしれない。
夜、机に向かい、久しぶりに日記を開いた。
『今日はたくさんの優しい出来事があった。美月と会える日も近い。私は大丈夫。私は自分で現実を選んでいる。』
その言葉を書きながら、涙が一粒こぼれた。
でもそれは、嬉しさと安心の涙だった。
布団に入ると、どこかで風が優しく鳴いていた。
夢の中で、美月が「お母さん、ありがとう」と言いながら手を繋いでくれた。
その手のぬくもりが、目覚めたときにもまだ残っていた。
小さな奇跡は、ちゃんと気づけば、いつもそばにあってくれる。
私はようやくそのことに気づいた。
そしてこれからも、もっともっと奇跡を見つけていける気がした。