5.偶然ではない出会い【理不尽な世界の攻略法 ~51歳シングルマザーの覚醒ストーリー~】

理不尽な世界の攻略法 ~51歳シングルマザーの覚醒ストーリー~

第1章:理不尽な世界に囚われて

5. 偶然ではない出会い

 日曜日の朝、私はぼんやりとコーヒーを飲んでいた。
 カップの中に映る自分の顔が、なんだか疲れて見える。

 昨日の占いはうまくいったし、少しは気が紛れたけれど、結菜のことを考えると、やっぱり気持ちは晴れない。
 結菜はどうしてるだろう。ご飯はちゃんと食べてるかな。
 夜は寂しくないかな。

 そんなことを考えていたら、スマホの画面が光った。

 「今日、会えませんか?」

 送り主は、久しぶりの名前だった。

 「……佐伯さん?」

 佐伯さんは、昔、占いのイベントで知り合った人だ。
 私の占いを受けたあと、「面白かったです!」と妙に気に入ってくれて、それから何度かお客さんとして来てくれていた。
 スピリチュアルな話が好きな人で、いつも興味深い話をしてくれる。

 でも、ここ半年くらい連絡はなかった。
 それが、なぜ今日突然?

 私は「いいですよ」と返信し、近所のカフェで待ち合わせをすることになった。

 —

 昼過ぎ、カフェに着くと、佐伯さんはすでに席に座っていた。
 相変わらず落ち着いた雰囲気で、柔らかく微笑んでいる。

 「お久しぶりです」

 「久しぶりですね。急にすみません」

 「いえいえ、びっくりしましたけど」

 私はコーヒーを注文し、佐伯さんをじっと見た。

 「それで、今日はどうされたんですか?」

 すると、佐伯さんは静かにこう言った。

 「……あなた、大変なことになってますね」

 私は驚いた。

 「えっ、なんでわかるんですか?」

 佐伯さんは笑った。

 「なんとなく、そんな気がしたんです」

 私は思わずため息をついた。

 「実は、娘が児童相談所に連れて行かれてしまって……」

 佐伯さんは黙ってうなずきながら、私の話を聞いてくれた。
 理不尽な状況、結菜に会えないこと、どうすればいいのかわからないこと。

 ひとしきり話し終えると、佐伯さんはコーヒーを一口飲んでから、こう言った。

 「やっぱり、あなたにはタフティメソッドが必要ですね」

 私は思わず身を乗り出した。

 「タフティメソッド! それ、私も最近調べたんです!」

 佐伯さんは少し驚いたような顔をした。

 「おや、もうそこまでたどり着いていましたか」

 「なんか、不思議な感じがして……夢でも似たようなことを言われたんです」

 私は、夢の中で「この世界はスクリーンだ」と言われたことを話した。

 すると、佐伯さんはにっこり笑って言った。

 「それはもう、導かれてますね」

 私は「導かれてる」と言われても、正直ピンとこなかった。

 でも、佐伯さんの話を聞くうちに、私は少しずつ考えが変わってきた。

 「タフティメソッドは、ただのスピリチュアルな話じゃないんですよ」

 「へぇ……」

 「意識をスクリーンの外に置くことで、現実が変わっていく。あなたは今、理不尽な状況にいますよね?」

 「はい」

 「でも、その世界を見ているのは、誰ですか?」

 「……私?」

 「そう。あなたは観客でもあり、スクリーンの向こう側にいる存在でもあるんです」

 私は、わかったような、わからないような顔をした。

 「つまり……私は今の状況を変えられるってことですか?」

 佐伯さんは静かにうなずいた。

 「そうです。ただし、意識の使い方を変えないといけません」

 私は興味津々になってきた。

 「どうすればいいんですか?」

 「まずは、スクリーンの意識を持つこと。そして、現実を”眺める”のではなく、”選ぶ”ことです」

 私はじっと佐伯さんを見つめた。

 「私、結菜を取り戻せますか?」

 佐伯さんは微笑んだ。

 「あなたがそう決めれば、そうなります」

 その言葉に、私はなぜか鳥肌が立った。

 これは、ただの偶然の出会いじゃない。
 私は今、何か大きな流れの中にいるのかもしれない。

 「……試してみます」

 佐伯さんは、満足そうにうなずいた。

 「きっと、大丈夫ですよ」

 その言葉が、今の私には、何よりも心強かった。