4.『意識の目覚め~望む現実を描く第一歩~』【理不尽な世界の攻略法~望むシナリオを選択する~】

理不尽な世界の攻略法~望むシナリオを選択する~

第4話『意識の目覚め~望む現実を描く第一歩~』

その夜、私は「タフティ・ザ・プリーステス」の本を開いたまま、夢中でページをめくっていた。
まるでこの本が、遠い昔から私のことを知っていたかのように思えた。
ページの一つ一つに、優しくも力強い言葉が並んでいて、不思議と胸が熱くなった。

『あなたの現実は、あなた自身が映写している映画である。映写機のフィルムを変えれば、スクリーンに映る物語も変わる。』

そんな言葉が書かれていた。私は、心の中で小さく「なるほど…」とつぶやいた。
私はこれまで、自分が映画の中の脇役のように生きてきた。
でも本当は、自分こそが主演であり、監督であり、脚本家でもあったのだ。

翌朝、久しぶりに気持ちのいい目覚めだった。
カーテンを開けると、昨日まで重たく感じていた空が少しだけ軽やかに見えた。

「今日こそ、私のシナリオを書いてみよう」

私は机に向かい、ノートを広げた。タロットカードを横に置き、深呼吸をしてペンを取った。

「美月が笑顔で帰ってくる。私たちは安心して夕飯を囲む。職場も穏やかで、みんな私を尊重してくれる。そして私は…私自身を大切にできるようになる。」

そう書きながら、涙がひと粒、ポトリとノートに落ちた。
その涙は悲しみではなく、希望に満ちたものだった。

ふとスマホを見ると、メッセージが届いていた。
差出人は、以前私が占ったお客さんだった。

「彩香さん、あの時いただいたアドバイスで勇気が出ました。今度また見てほしいです。」

そのメッセージに思わず微笑んだ。
誰かの力になれていたことが、私自身に力をくれるなんて思ってもみなかった。

その日の午後、私は小さな公園を散歩した。
木々の緑が風にそよぎ、鳥のさえずりが遠くで聞こえた。
ふと、ベンチに腰を下ろして空を見上げた。
空はどこまでも広くて、どこか「大丈夫だよ」と言ってくれている気がした。

「私、変われるかもしれない」

そのとき、隣に座っていた見知らぬおばあさんが、にっこり笑って言った。

「あなた、きっと大丈夫よ」

驚いて振り向くと、おばあさんは立ち上がり、ゆっくりと歩き出して行った。
まるで本から抜け出してきたタフティ本人のようだった。

帰宅後、何気なく見たSNSの投稿に目をやると、こんな一文が目に飛び込んできた。

『サインはどこにでも現れる。それを受け取れるかどうかは、あなたの意識次第。』

あのおばあさんも、きっとサインだったのだろう。
私は胸の奥で静かに何かが目覚めていくのを感じた。

その晩、夢を見た。美月が笑顔で「ただいま!」と玄関を開ける夢だった。
目が覚めて、涙があふれた。
だけど今度は泣きながらも、心の中が温かかった。

「大丈夫。私が信じれば、現実は動く。」

私はその日、自分の中で小さな革命が起きたことを知った。
これからきっと、ゆっくりだけど、私のシナリオは変わっていく。
そんな予感が、心の底から湧き上がっていた。