第6章:新しい現実へ
29. 人生はシナリオ通りに進む
最近、私はよく思う。
「人生って、本当にシナリオ通りに進むんだな」って。
結菜が帰ってきてから、毎日は穏やかで楽しくて、以前の私が想像もできなかったくらい幸せだ。
もちろん、小さな問題や悩みがまったくないわけじゃないけど、「大丈夫、これはすべて予定通り」と思うと、不思議と心が軽くなる。
私は、朝の光が差し込むキッチンで、コーヒーを淹れながらふと考えた。
「もし、あのとき結菜と離れていなかったら、私はここまで変われていただろうか?」
きっと、答えは「NO」だろう。
あのときは「なんでこんなことが起こるの?」と絶望したけれど、今振り返ると、すべてが意味のある出来事だったように思う。
まるで、誰かが書いたシナリオ通りに進んできたみたいに。
***
「ママ、今日もいい天気だね!」
結菜の声が、キッチンに響く。
「おはよう、結菜。昨日ちゃんと寝れた?」
「うん! ママもちゃんと寝た?」
私は、コーヒーカップを手にしながら微笑んだ。
「もちろん。最近はぐっすり寝られるよ」
「ふーん、ママ、前は全然寝れてなかったのにね」
「そうなの?」
「うん。いつも『はぁ~』ってため息ついてた」
結菜がオムレツをフォークでつつきながら、じっと私を見つめる。
「でも、今のママは、なんか楽しそう」
私は、その言葉にじんわりと胸が温かくなった。
「ママ、最近思うんだよね。人生ってシナリオがあるんじゃないかって」
「シナリオ?」
「うん。まるで映画みたいに、すべての出来事には意味があって、どんなことも必要だから起こってるんだなって」
結菜はフォークをくるくる回しながら考え込んだ。
「じゃあ、ママが結菜と離れてたのも、シナリオ通り?」
私は、ゆっくりとうなずいた。
「そう思うと、なんか不思議でしょ?」
「うーん……。じゃあ、今はどういうシナリオ?」
「今は、『ママと結菜の新しい生活が始まる』っていうシナリオだね」
結菜は「ふーん」と言いながら、オムレツを一口食べた。
「じゃあ、これからのシナリオは?」
私は、少しだけ考えてから言った。
「これからは、『ママと結菜が楽しい毎日を作る』っていうシナリオにする!」
結菜は、パッと明るい顔をして、スプーンを持ち上げた。
「それ、いいね! 楽しいシナリオにしよう!」
***
その日の午後、私は近所の公園に結菜と一緒に出かけた。
以前は、忙しさに追われて、こうやってのんびり公園を歩くことなんてなかった。
結菜はベンチに座りながら、落ち葉を手のひらでくるくる回していた。
「ねえ、ママ」
「ん?」
「人生のシナリオって、自分で書けるの?」
私は、その言葉に少し驚いた。
「うん。たぶんね、自分で書けるんだと思う」
「ふーん……」
結菜はしばらく考え込んでいたけど、やがて小さく笑った。
「じゃあ、私は『ママとずっと仲良し』っていうシナリオにする!」
私は思わず笑ってしまった。
「いいね、それ!」
結菜はベンチから立ち上がって、落ち葉をふわっと空に放った。
「ママは?」
「ママはね……」
私は、少しだけ考えてから言った。
「ママは、『どんなことがあっても大丈夫』っていうシナリオにする」
結菜は、「そっか」と満足そうにうなずいた。
「じゃあ、これから何があっても、それはシナリオ通りなんだね?」
「そういうこと!」
「じゃあさ、これからすごくいいこともシナリオ通りになる?」
「なるよ!」
「じゃあ、アイス食べたい!」
「それもシナリオ通り?」
「うん!」
私は、結菜の無邪気な笑顔に笑いながら、近くのコンビニへ向かった。
***
家に帰ると、私はソファに座ってしばらく考え込んだ。
「人生は、シナリオ通りに進む」
以前の私は、「なんでこんなことが起こるの?」と考えてばかりいた。
でも今は違う。
「どんなことがあっても、それはベストなタイミングで起きている」
そう思えるようになった。
私は、ふと結菜を見た。
結菜は、アイスを食べながらテレビを見ている。
「ねえ、ママ」
「ん?」
「これからのシナリオ、めちゃくちゃ楽しくしようね!」
私は、結菜の言葉に大きくうなずいた。
「もちろん!」
人生は、シナリオ通りに進む。
だから、私はこれからも、自分で最高のシナリオを書いていこうと思う。
結菜と一緒に、楽しく、幸せに。
私は、そう決めた。