29. 人生はシナリオ通りに進む【理不尽な世界の攻略法 ~51歳シングルマザーの覚醒ストーリー~】

理不尽な世界の攻略法 ~51歳シングルマザーの覚醒ストーリー~

第6章:新しい現実へ

29. 人生はシナリオ通りに進む

 最近、私はよく思う。

 「人生って、本当にシナリオ通りに進むんだな」って。

 結菜が帰ってきてから、毎日は穏やかで楽しくて、以前の私が想像もできなかったくらい幸せだ。
 もちろん、小さな問題や悩みがまったくないわけじゃないけど、「大丈夫、これはすべて予定通り」と思うと、不思議と心が軽くなる。

 私は、朝の光が差し込むキッチンで、コーヒーを淹れながらふと考えた。

 「もし、あのとき結菜と離れていなかったら、私はここまで変われていただろうか?」

 きっと、答えは「NO」だろう。

 あのときは「なんでこんなことが起こるの?」と絶望したけれど、今振り返ると、すべてが意味のある出来事だったように思う。

 まるで、誰かが書いたシナリオ通りに進んできたみたいに。

 ***

 「ママ、今日もいい天気だね!」

 結菜の声が、キッチンに響く。

 「おはよう、結菜。昨日ちゃんと寝れた?」

 「うん! ママもちゃんと寝た?」

 私は、コーヒーカップを手にしながら微笑んだ。

 「もちろん。最近はぐっすり寝られるよ」

 「ふーん、ママ、前は全然寝れてなかったのにね」

 「そうなの?」

 「うん。いつも『はぁ~』ってため息ついてた」

 結菜がオムレツをフォークでつつきながら、じっと私を見つめる。

 「でも、今のママは、なんか楽しそう」

 私は、その言葉にじんわりと胸が温かくなった。

 「ママ、最近思うんだよね。人生ってシナリオがあるんじゃないかって」

 「シナリオ?」

 「うん。まるで映画みたいに、すべての出来事には意味があって、どんなことも必要だから起こってるんだなって」

 結菜はフォークをくるくる回しながら考え込んだ。

 「じゃあ、ママが結菜と離れてたのも、シナリオ通り?」

 私は、ゆっくりとうなずいた。

 「そう思うと、なんか不思議でしょ?」

 「うーん……。じゃあ、今はどういうシナリオ?」

 「今は、『ママと結菜の新しい生活が始まる』っていうシナリオだね」

 結菜は「ふーん」と言いながら、オムレツを一口食べた。

 「じゃあ、これからのシナリオは?」

 私は、少しだけ考えてから言った。

 「これからは、『ママと結菜が楽しい毎日を作る』っていうシナリオにする!」

 結菜は、パッと明るい顔をして、スプーンを持ち上げた。

 「それ、いいね! 楽しいシナリオにしよう!」

 ***

 その日の午後、私は近所の公園に結菜と一緒に出かけた。

 以前は、忙しさに追われて、こうやってのんびり公園を歩くことなんてなかった。

 結菜はベンチに座りながら、落ち葉を手のひらでくるくる回していた。

 「ねえ、ママ」

 「ん?」

 「人生のシナリオって、自分で書けるの?」

 私は、その言葉に少し驚いた。

 「うん。たぶんね、自分で書けるんだと思う」

 「ふーん……」

 結菜はしばらく考え込んでいたけど、やがて小さく笑った。

 「じゃあ、私は『ママとずっと仲良し』っていうシナリオにする!」

 私は思わず笑ってしまった。

 「いいね、それ!」

 結菜はベンチから立ち上がって、落ち葉をふわっと空に放った。

 「ママは?」

 「ママはね……」

 私は、少しだけ考えてから言った。

 「ママは、『どんなことがあっても大丈夫』っていうシナリオにする」

 結菜は、「そっか」と満足そうにうなずいた。

 「じゃあ、これから何があっても、それはシナリオ通りなんだね?」

 「そういうこと!」

 「じゃあさ、これからすごくいいこともシナリオ通りになる?」

 「なるよ!」

 「じゃあ、アイス食べたい!」

 「それもシナリオ通り?」

 「うん!」

 私は、結菜の無邪気な笑顔に笑いながら、近くのコンビニへ向かった。

 ***

 家に帰ると、私はソファに座ってしばらく考え込んだ。

 「人生は、シナリオ通りに進む」

 以前の私は、「なんでこんなことが起こるの?」と考えてばかりいた。
 でも今は違う。

 「どんなことがあっても、それはベストなタイミングで起きている」

 そう思えるようになった。

 私は、ふと結菜を見た。

 結菜は、アイスを食べながらテレビを見ている。

 「ねえ、ママ」

 「ん?」

 「これからのシナリオ、めちゃくちゃ楽しくしようね!」

 私は、結菜の言葉に大きくうなずいた。

 「もちろん!」

 人生は、シナリオ通りに進む。

 だから、私はこれからも、自分で最高のシナリオを書いていこうと思う。

 結菜と一緒に、楽しく、幸せに。

 私は、そう決めた。