24. 会えない日々の意味【理不尽な世界の攻略法 ~51歳シングルマザーの覚醒ストーリー~】

理不尽な世界の攻略法 ~51歳シングルマザーの覚醒ストーリー~

第5章:奇跡が始まる

24. 会えない日々の意味

 結菜が戻ってくる日が決まった。

 児童相談所での面談の帰り道、私は何度もその事実を噛みしめながら歩いていた。
 あんなに遠く感じていた未来が、もうすぐ目の前まで来ている。

 「結菜と一緒に暮らせるんだ……」

 それは、ずっと願っていたことだった。
 でも、いざ現実になりかけると、なんだか胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになった。

 私は本当に、ちゃんと結菜を迎えられるんだろうか?
 また前と同じように、忙しさにかまけて、結菜を寂しくさせてしまうんじゃないか?

 「……いや、大丈夫」

 私は自分に言い聞かせた。

 今の私は、前とは違う。
 タフティメソッドを知り、自分の意識が現実を作ることを学んだ。
 何より、この数カ月の間に、私はたくさんのことを考えた。

 そして気づいた。

 「会えない日々には、意味があったんだ」

 ***

 結菜と離れて暮らすようになったとき、私は絶望していた。

 「どうしてこんなことになったんだろう」
 「私がもっとちゃんとしていれば、こんなことにはならなかったのに」

 毎日のように自分を責めた。
 児童相談所に相談しても、「結菜さんの気持ちを優先しましょう」と言われるだけで、すぐに戻ってくるわけではなかった。

 それがどれほど苦しかったか。

 結菜と一緒に過ごしていた日常が、どれほどかけがえのないものだったかを痛感する日々だった。

 でも、今ならわかる。

 あの時間があったからこそ、私は変わることができた。
 結菜を失いかけたからこそ、私は本気で「母親としての自分」と向き合うことができた。

 もしも、何も変わらずに日々を過ごしていたら?
 私は、仕事に追われて、結菜の寂しさに気づかないままだったかもしれない。

 結菜が私のもとを離れたことは、最悪の出来事だった。
 でも、それが私を変える最高のきっかけになった。

 「会えない日々には、意味があったんだ」

 私は、そのことを心の底から確信した。

 ***

 家に帰ると、私は結菜の部屋を開けた。

 ベッドには、結菜が置いていったぬいぐるみが、そのままの形で残っていた。
 棚には、結菜が読んでいた本や、お気に入りの文房具が並んでいる。

 「ずっと待ってたよね」

 私は、ぬいぐるみをそっと抱きしめた。

 結菜が戻ってきたら、この部屋でまた一緒に過ごせる。
 前よりも、もっとたくさん話して、もっと笑い合える時間を作ろう。

 私は、ぬいぐるみをそっと元の場所に戻した。

 「準備しなきゃね」

 私は、結菜を迎えるための準備を始めることにした。

 ***

 次の日、私は久しぶりに雑貨屋に足を運んだ。

 結菜が好きそうなクッションや、小さな観葉植物を買う。
 前の私は、「そんなもの必要ない」と思っていたかもしれない。
 でも、今はわかる。

 「家の空間を整えることも、エネルギーの流れを良くすることにつながるんだ」

 店を出て、帰り道のカフェでコーヒーを飲みながら、ふとスマホを見た。

 画面には「11:11」の数字が並んでいた。

 私は思わず微笑んだ。

 「やっぱり、これでいいんだ」

 会えない日々は、ただの試練ではなかった。
 私たち親子にとって、必要な時間だったんだ。

 すべての出来事には意味がある。

 私は、そのことを噛みしめながら、コーヒーを一口飲んだ。