第4章:意識のシフト
19. 見えない力に操られない生き方
私はこれまで、いろんなものに振り回されて生きてきた。
仕事の都合、周りの目、世間の常識、そして、どうしようもない運命みたいなもの。
「シングルマザーだから仕方ない」
「世の中なんて理不尽なもの」
「自分ではどうしようもないこともある」
そうやって、ずっと「見えない力」に操られているような気がしていた。
でも、最近気づいたのだ。
「私は、そんな力に振り回されなくてもいいんじゃないか?」と。
***
児童相談所の面談の日。
前回の結菜との面会が終わってから、私はずっと心を整えることに集中していた。
部屋を片付けて、エネルギーの流れを変えて、意識の持ち方を見直した。
「私は被害者ではない」
「こうなると決めれば、そうなる」
そう思うだけで、不安は少しずつ消えていった。
でも、それでも児童相談所の建物の前に立つと、心臓が少しだけドキドキした。
この場所に来るたびに、「結菜を奪われた日」のことを思い出す。
あの日の私は、まるで自分が犯罪者みたいに扱われ、言い訳すら許されないような気持ちだった。
何を言っても「母親失格」と思われているようで、ただただ悔しくて、どうにもならなかった。
でも、今日は違う。
「私は、自分の人生の主導権を握る」
そう決めて、この場に来たのだから。
私は一度深呼吸をして、ドアを開けた。
***
担当の職員さんが迎えてくれた。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
静かな会議室に案内され、私は椅子に座った。
相手が何を話すのか、私は静かに待つことにした。
「今日は、結菜さんの今後についてお話したいと思います」
「はい」
私は落ち着いてうなずく。
「最近の結菜さんの様子ですが、少しずつ落ち着いてきています」
私はホッとした。
「ただ、やはりお母さんと離れていることで、不安もあるようです」
私はじっと、職員さんの目を見た。
「お母さんとの時間を増やすことで、結菜さんの気持ちも安定するのではないかと考えています」
私はその言葉を聞いて、確信した。
「やっぱり、流れが変わってきた」
今までは、「母親が反省し、生活環境を改善しなければならない」というスタンスだった。
でも、今は違う。
「お母さんとの時間を増やす」――つまり、私と結菜が一緒にいる未来へ向かっているのだ。
私は、この流れを引き寄せたんだ。
「ありがとうございます」
私は落ち着いた声でそう答えた。
「では、次回から面会の頻度を増やす方向で進めてもよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
私は、かつての自分だったら、「こんな話、もっと早くしてくれればよかったのに!」と憤っていたかもしれない。
でも、今は違う。
私は「被害者」ではない。
だから、何かに操られることもない。
私は私の人生を選び、決めていく。
「では、次回の日程を調整しましょう」
そう言われた瞬間、スマホの画面が光った。
ちらっと時計を見ると、「11:11」。
私は思わず、心の中で笑ってしまった。
「うん、やっぱり私は、自分の現実を創ってる」
これから先も、見えない何かに振り回されることは、もうない。
私は、私の人生を生きる。
そう、決めたのだから。