第4章:意識のシフト
18. エネルギーの流れを変える方法
最近、私は「エネルギー」について考えるようになった。
……と言っても、目に見えない不思議な力の話ではない。
タフティメソッドを学んでから、「エネルギーの流れ」を意識することが増えたのだ。
気分が沈んでいるときは、すべてがうまくいかない。
逆に、ちょっと気分が良いだけで、思いがけずいいことが起こる。
「これって、偶然じゃないのかも?」
そう思ったのがきっかけだった。
***
そんなある日、私はいつものカフェでコーヒーを飲んでいた。
結菜との面会が終わって数日が経ち、私は「次に会うときはもっと前向きな話をしよう」と決めていた。
でも、そのためには、まず私自身のエネルギーをいい状態にしておかなくちゃいけない。
「エネルギーの流れを変えるには、どうしたらいいんだろう?」
そう考えていたら、ふと隣のテーブルの会話が耳に入ってきた。
「最近、気分が落ち込んでたんだけどね、部屋の掃除したらスッキリしたの!」
「わかるー! 部屋がきれいになると、なんか気持ちも整うよね」
私は、その言葉を聞いて「なるほど」と思った。
「もしかして、物理的な環境を整えることが、エネルギーの流れを変える方法なのかも?」
***
というわけで、私は家に帰ると、さっそく掃除を始めた。
まずは、何年も使っていない服や小物を処分する。
「もしかしたら使うかも」と思って取っておいたものを、バッサバッサと捨てる。
次に、部屋の模様替えをしてみた。
テーブルの位置を少しずらし、カーテンを開けて光を取り入れる。
最後に、久しぶりにお気に入りのアロマを炊いて、ふぅっと深呼吸した。
「……なんか、すっきりした!」
部屋がきれいになると、不思議と心も軽くなる。
なんとなく気分が良くなって、ちょっとだけ前向きな気持ちになれる。
「これが、エネルギーの流れを変えるってことなのかも?」
私は、何気なくスマホを手に取った。
すると――。
「お?」
児童相談所から、メッセージが届いていた。
スマホの画面には、見慣れた担当者の名前が表示されている。
「次回の面会について、お話ししたいことがあります」
私は、一瞬だけ息をのんだ。
「お話ししたいことがあります」――この言葉には、いろいろな可能性がある。
「面会ができなくなる」という悪い知らせかもしれないし、逆に「結菜との時間を増やせる」という前向きな話かもしれない。
指先が少し震えるのを感じながら、私はスマホをしっかりと握りしめた。
数週間前の私なら、ここで真っ先に悪い方を考えていただろう。
「また何か問題が起こったんじゃないか?」
「結菜が『もう会いたくない』って言ったのかもしれない」
「私が何か間違えた?」
そんなネガティブな考えが頭の中をぐるぐると駆け巡っていたはずだ。
でも、今日は違った。
私はすぐに、これは「偶然ではない」と思った。
「エネルギーの流れが変わったから、現実も動き出したんだ」
そう確信した。
私は今日、部屋を片付け、不要なものを捨て、空間を整えた。
そのおかげで、気持ちがスッキリして、エネルギーが軽くなった。
たったそれだけのことなのに、まるで自分の周りの空気が変わったように感じた。
そして、その直後に、このメッセージが届いた。
今までなら、「たまたまのタイミング」と思っていただろう。
でも、タフティメソッドを知った今の私は違う。
「私が意識を変えたから、現実が動いたんだ」
そう考えたら、不安は消え、ワクワクするような気持ちが湧いてきた。
私はスマホの返信画面を開き、ゆっくりと文字を打ち込んだ。
「お時間いただきありがとうございます。明日、伺います」
メッセージを送信し、私はふぅっと息を吐いた。
「大丈夫、私はもう、現実を自分で創る側にいるんだから」
窓の外を見ると、夕焼けが美しく街を染めていた。
明日は、どんな話が聞けるのだろう?
私は、少し胸を高鳴らせながら、スマホをそっとテーブルに置いた。