第3章:シンクロニシティの波
11. 繰り返される数字の暗示
最近、私はやたらと同じ数字を目にする。
スマホを開くと「11:11」。
レシートの合計金額が「1,111円」。
車のナンバープレートに「7777」。
時計を見るたびに「22:22」。
最初は「ただの偶然だろう」と思っていたけれど、ここまで続くとさすがに気になってくる。
まるで誰かが「ほら、気づいてる?」とメッセージを送ってきているような気がする。
でも、これって何の意味があるんだろう?
***
そんなことを考えながら、私は児童相談所へ向かっていた。
昨日、相談所から「話をしたい」と連絡があり、私は「いよいよ進展があるかもしれない」と期待していた。
いや、正確に言うと、「もうストーリーは決まっている」と信じることにしたのだ。
タフティメソッドを実践してから、「私は観客なのだから、どんなストーリーを見るかは選べる」と思うようになった。
今日も、私は「結菜と一緒に暮らす未来」をスクリーンに映している。
だから、うまくいく。
そう思いながら、電車に乗り込んだ。
ふと、目の前の席を見ると、車内広告の一角に「1111」と大きく書かれた番号があった。
「まただ……」
心の中でつぶやく。
最近、こういうことが本当に多い。
時計の数字、レシートの数字、広告、ナンバープレート、SNSのいいねの数……。
気づけば、どこかしらにゾロ目の数字が現れる。
私はスマホで「1111 意味」と検索してみた。
すると、こう書かれていた。
「エンジェルナンバー1111:あなたの願いが現実になろうとしています」
私は一瞬、スマホを持つ手が止まった。
「……え、マジ?」
さらにスクロールしてみると、こんなことも書いてある。
「1111は『目覚めのサイン』です。あなたの意識が現実を創造していることを理解してください」
これって、まさにタフティメソッドと同じじゃない?
私は思わずスマホを見つめたまま、電車の揺れに身を任せた。
「現実を創造しているのは、自分」
やっぱり、何かが動いている。
私は、正しい方向に進んでいるのかもしれない。
***
児童相談所に着くと、担当の女性がいつものように静かに微笑んでいた。
「お待たせしました。では、お話を始めましょう」
私は少し緊張しながら、向かいの椅子に座る。
「結菜さんですが、だいぶ落ち着いてきました」
私はホッとした。
「そうですか……」
「それで、そろそろお母さんとの面会を検討してもいいかと」
私は思わず息をのんだ。
面会――ついに、結菜に会える!
私は、スクリーンの向こう側で微笑む観客の自分を思い浮かべた。
「そうだよね、もうこれは決まっているストーリーだもんね」と、どこか冷静な自分もいた。
「ありがとうございます。ぜひ、会いたいです」
「では、日時を調整しましょう」
私は、もう一度スマホを開いた。
カレンダーを確認しようとしたその瞬間――。
「11:11」
また、ゾロ目。
私は思わず笑いそうになった。
「もう、ここまでくると笑うしかないよね……」
シンクロニシティの波は、確実に私の周りで渦を巻いている。
何かが動き始めている。
私はそれを感じながら、静かに深呼吸をした。
「大丈夫、私はもう、この映画の結末を知っているんだから」
そして、私は、スクリーンの外からそっとその未来を見守ることにした。